さかの道

さかが駄文を書き連ねるようですよ。

正義

この世には大勢の人々が暮らしている。彼らの内誰も同じ姿形を所有している人は居ない。彼らの内誰も同じ価値観を所有している人は居ない。大勢、それこそ大勢の人々の中で誰も。この世には大勢の価値観が暮らしている。



この世に住む彼ら一人一人は一つ同じ正義の下暮らしている。どうあっても人類は画一化され得ない。価値観が違えば正義が違い、正義が違えば信仰が違う。一人一人は数える程の数しかない信仰に、しかし大勢がしがみついている。



正義のヒーローは巨悪を絶やす。その悪から見れば、ヒーローはやはり巨悪だ。喧嘩をして平行線の彼らは、遂に逢うことも無かった。各々が自ら一つの正義に従ったならば、世界は一人にとって悪意に満ちたものとなる。



愛の名の下に罪悪を犯す人が居る。愛が許されるならば、正義の名の下に罪悪は行われて然るべきなのだ。当人にとっての“良い人”は、どうしたって第三者から見れば“悪い人”。矛盾は抱える。弱音は吐かず、品行方正に。一人だけの美徳をどうして人に認めて貰えようか。



世界を恨めば人を嫌いになる。自分を恨めば自分を嫌いになる。どちらがより幸せかを考える事など出来ない。人は一人で生きていく。その中で文句一つ洩らせない誰かは、一人で死んで行くしかない。